瓜南直子のこと - その2 -




ポチさんの画は生きている。


顔を近づけて、耳を澄ませてみれば


呼吸しているのがわかる。





ポチさんが面白い酔っぱらいだけではなく、

素晴らしい画家だということを知ったのは、

出会ってから、しばらく時間を要した。


画家・瓜南直子。

という存在よりも先にオレは

呑み仲間の粋なお姉さんである

(通称)ポチさんという

存在だったからである。


呑み仲間であるからもちろんお酒が好きで、

漬物屋の店主になっても成功間違いなし

という程の腕前を発揮した

漬け物は絶品であった。


一緒に呑んでる時は、

いつも馬鹿な話で盛り上がった。

真剣に画についての話など

あまりすることもなかった。

ポチさん宅で盛り上がったのも

キャンディーズと憂歌団、エロ話等々。

(ポチさんが貸してくれたキャンディーズのDVD。

 まだ借りっぱなしだなぁ)


仮に画家ではなく、

漬物屋のゴキゲンな酔っぱらい姉さん。

そんなポチさんであったとしても

オレは変わらず大好きな姉さんであっただろう。


ポチさんを紹介してくれた

鎌倉の盟友、長嶋ジュンさん、

ポチさんのパートナーでもあり

同じく画家の伴清一郎さんと一緒に

鎌倉や北鎌倉で呑んだり食べたり、

段葛のこ寿々という蕎麦屋の2階の座敷にも呼んでもらったり、

一度、オレが野毛を案内したこともあった。


北鎌倉の佗助、鎌倉のヒグラシ文庫という

普段はライブをやらない、個人的にも大好きなお店で


「 スーマー君に唄ってもらおうよ 」


と店主さんたちに薦めてくれたのも

ポチさんと伴さんなのである。




ある日、ようやくポチさんの個展に行く機会を得た。

そこでオレはようやく、ポチさんこと、

画家・瓜南直子の存在を知ると同時に

そして、あの呼吸する画を目の当たりにしたのである。


ポチさんの画を買いたい。

オレは、生まれて初めてそう思った。

もちろん手が出ないわけなのだが。


描くにあたり、その土台作りはまさに

地ならし、耕す畑。

もしくは工事現場なのだそうだ。

その途方も無い作業の末に何を描くのかが

自然と見えてくるらしい。

それまではひたすら土台作業を続けながら

様々な葛藤の連続の日々だったに違いない。


言い方を換えれば、

最初は姿を見せない画の言いなりなのである。

描くべき画、ではなく描かされている画。


【身を削る】


とは、こういうことなのだ。


そしてこんな時に必ず思い出すのが、

某映画でライス&ビーンズの入った鍋を持った

シルクのナイトガウン姿のレディ・エースの一言。


「 毎晩創造するということは…


  それが美しいものでも


  死ぬほど苦しい。


  わかるか? 」


もちろんオレの中での想像に

過ぎないかも知れないが、

ポチさんはそんな苦しみを知っている

数少ない日本人だったのではないか。


今の日本人が目を逸らしがちで

しかしながら一番大切なこと。




残され生き続ける作品たちを

もし直に観る機会があったなら、貴方も是非、

画の中の兎神国に住む人たちに

顔を近づけて、観ると同時に

耳を澄ませてみてほしい。


もしかしたら、呼吸を感じることが

できるかもしれない。




画家・瓜南直子は、鎌倉の素晴らしい芸術家

であることは誰しもが認めることだと思うが、

オレにとってはやはり、それだけでなく、

面白い酒好きな、ゴキゲンなお姉さんなのである。




- - - - - 




お通夜の2日前にポチさん宅に出向き、

ポチさんに会いに行った。

いろいろな人たちが来ていて

仮通夜という名の宴会が開かれていた。


ポチさんの痩せ細った寝顔は、

大人になった美人のポチさんだった。

表情はとても穏やかで素敵だった。


オレは同じ部屋でずっと酒を呑み、

涙をこらえながら想いを巡らせ、

ポチさんが眠る畳の上で大イビキをかいて

朝まで寝てしまったのである。


朝早く目が覚めたオレは起き上がり

ポチさんのおでこをそっと撫でて


「ありがとう、ポチさん」


と一言残して、

立て付けのわるい玄関の

引き戸を開けて

植物が生い茂る外に出た。



玄関横に目についた植物が

とても奇麗だったので

写真に収めていたら、

すぐ横の白っぽい木の上から突然、

猫が一匹降りてきたのである。

暫く、オレを見つめていたが、

猫は塀に飛び乗って姿を消した。




もしかしたら、ポチさんかな。


などと、勝手にオレは思ったのであった。


もっと沢山馬鹿で楽しいことしたかったけど……


ポチさん、心から本当にありがとう。


伴さん、またゆっくり呑みましょう。





ポチさんの画は生きている。


顔を近づけて、耳を澄ませてみれば


呼吸しているのがわかる。


だから、


ポチさんも生きている。






( 2012年6月4日早朝 瓜南直子 56歳 満月の日に兎神国へ出発つ )





【覚え書き】

*この日記はあくまでもオレの目線でのポチさんのことです。


*SUEMARR'S NOTEより「こ寿々と、瓜南直子展のこと」

http://note.suemarr.com/?eid=1159876


*瓜南直子のブログ

http://kanannaoko.seesaa.net/


*YOUTUBEより 瓜南直子 作品集

http://www.youtube.com/watch?v=31eBjBUHTmI


*YOUTUBEより 瓜南直子 インタビュー

 観○光2011 泉涌寺

http://www.youtube.com/watch?v=4WFfenWdj7w



【追記】

*ポチさんとの最後のやりとり(2012年5月5日頃)


オレ「 やはりポチさんの絵は直に接しなくては伝わらない。

    絵の目の前で深呼吸すると会話している気になる。

    瓜南直子展は鎌倉ドローイングギャラリー5/6まで。 」


ポチさん「 スーマー君………ジーン 」


オレ「 近くで見るだけでなく、

    目を閉じて耳を向けてすましてみたり…

    そんなことしたくなる絵って中々ないもん。 」


ポチさん「 言われてみれば、草も魚もケモノも花も虫も、

      みんなちゃんと深呼吸できてるかー、

      が最後の問いかけかも。 」





机の前に並ぶ画。椎名君画(左)ポチさん画(右)

オレにできることは、こんな風に唄うことだけです。










                       
コメント
Hello Tim,
Thank you for your comment.
sorry for delay reply...


Which song is it? But now I am not confident of translating it in English.
Rhythm and meaning hidden in lyrics are not in the literal translation.
But I think I will challenge someday.
  • SUEMARR
  • 2016/12/28 2:25 AM
I need to get the lyrics in English to one of SUEMARR songs can anyone help me??
  • Tim Fink
  • 2016/10/23 8:20 AM
しんちゃんさん。
お返事が遅くなりました。先日の三回忌の命日にポチさんのためのライブを鎌倉ヒグラシ文庫でやりました。ポチさんは替え歌も得意でしたね。コメントありがとうございました。
  • スーマー
  • 2014/06/30 11:34 AM
今年(2013年)8月21日に「よしろう」でポチさんが故人になったことを初めて知りました。ショックでした。酒場で隣り合わせると、シルビー・バルタンの「アイドルを探せ」を上手なフランス語で歌ってくれました。薔薇画廊の個展にも伺いました。遅くなりましたがお悔やみ申し上げます。
  • しんちゃん
  • 2013/08/22 8:01 PM
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「泥水は揺れる」特典CDは付きません

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